医師主導治験の実施体制の調査
提言

 医師主導治験が未承認薬の開発やドラッグラグ解消の手段として今後ますます活用されるために、今回の調査結果を踏まえ、本研究班は以下の7項目について提言を行う。


1.教育環境の整備

・ 全ての医療関係者を対象とした「医師主導治験」に関する啓発、ならびに医師主導治験
  チームの各構成員を対象とした教育プログラムの作成と公開が必要である。
・ 治験調整事務局業務に特化したプロジェクトマネジメント教育プログラムの作成と、公開が
  必要である。


2.標準的業務モデルの作成

・ 治験調整事務局、実施医療機関の標準的業務モデルの作成と公開が必要である。


3.治験関連通知の改正

・ 治験届は「自ら治験を実施する者」単位ではなく、治験実施計画書単位での届出を可能
とする。*1
・ 既に国内で承認されている医薬品を被験薬として、用法・用量又は効能・効果の承認事項一部変更のための治験では、自ら治験を実施する者が当局へ報告すべき対象から「措置報告」を除外する。 *2
保険外併用療養費制度における研究費による経費負担の見直し。*3

 

*1平成26年1月更新情報:

「自ら治験を実施しようとする者による薬物に係る治験の計画の届出等に関する取扱いについて(平成25年5月31日 薬食審査発0531第4号)」により、実施医療機関の追加は治験変更届による届出が認められた。また、届出代表者による治験の届出が認められ、治験責任医師の連名での届出は不要となった。


*2平成26年1月更新情報:

「自ら治験を実施した者による治験副作用等報告について(平成25年7月1日付け薬食審査発0701第21号)」により、自ら治験を実施する者は、治験副作用等報告、外国措置報告及び研究報告について治験薬提供者等によって規制当局へ報告される場合又は報告される予定であることが確認できた場合は、重複する報告を省略できることになった。


*3平成29年1月更新情報:

「「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」の一部改正について(平成28年3月4日保医発0304 第12号厚生労働省保険局医療課長・歯科医療管理官)」により、同種同効薬に係る投薬及び注射に係る費用は、保険外併用療養費の支給対象となった。


4.公的研究費規程の見直し*4

 ほとんどの医師主導治験は公的研究費を使用して治験を実施していることから、今後医師主導治験を推進していくために、これにかかる経費は公的研究費で円滑に運用できるよう、研究費規程の見直しが必要である。

・ 複数年度経理を可能にし、研究期間を通して必要経費の支払いができるようにする。
外部委託業務の多い医師主導治験の実状を鑑み、委託費の上限規程に関する見直しを行う。
・ 医師主導治験に携わるスタッフの労働対価が正当に支払われ、安定雇用を促進するために
  人件費に係る規定の運用見直しを行う。
・ 公的研究費より、必要に応じて、保険外併用療養費支給対象外経費の支払いや、補償に
  おける医療費や医療手当の支払いができるようにする。


*4平成29年1月更新情報:

現在は、一部の使用規定制限が緩和されている。


5.医師主導治験基盤整備

治験期間限定の一時的な組織ではなく、医師主導治験の専門的知識と経験をもつスタッフの
  継続的な雇用など、長期的に医師主導治験の経験を蓄積して次試験に生かしていけるよう
  な支援組織の構築が必要である。
・ 医師主導治験に係る膨大な事務処理を効率的に行うために、「公的な医師主導治験用IT
  システムの構築」が望まれる。*5

 

*5平成26年1月更新情報:
日本医師会 治験促進センターが提供する以下のサービスは、利用者による制限なく医師主導治験においては活用することができる。

1)治験計画届作成システム:治験届を厚生労働省へ届け出る際に必要となる治験計画届とそのXMLファイルをクラウド上で作成できる。
2)カット・ドゥ・スクエア:統一書式入力支援のための機能並びに情報共有と文書保存機能を有し、治験事務局関連業務の効率化に役立てることができる。
3)安全性情報管理システム:治験中に発生した重篤な有害事象報告や治験薬提供者/治験危機提供者より入手する安全性情報の文書管理並びに情報共有を意見調整を迅速に行うことができる。(医師会の研究事業採択プロジェクトに限る)


6.治験相談費用の減額

・ 医師主導治験の治験相談については、費用の減額について検討をお願いしたい。*6

 

*6平成26年1月更新情報:

現状では、有望性の高いシーズの実用化に向けた薬事戦略相談として、シーズ発見後の大学・研究機関を対象として医薬品候補の臨床開発初期試験に至るまでに必要な試験/治験計画に関する指導・助言を独立行政法人医療機器総合機構が行うようになった。相談方法には、3種類あり(1)個別面談並びに(2)事前面談は無料、(3)対面助言いずれも、一定の要件を満たす場合は通常の企業試験の10分の1の手数料が適応される。(「薬事戦略相談に関する実施要綱」の改正について(平成25年9月24日 薬機発第0924016号))


7.臨床試験の公開方法の見直し

・ 既存の臨床試験登録システムでは、「医師主導治験か否か」の検索は困難である。
  医師主導治験としての実施状況ならびに成果を広く開示するために、項目追加ならびに
  検索機能の充実を望む。


 本調査は、既存の治験環境下で医師主導治験を実施するために奮闘してきた治験調整事務局担当者の方々の惜しみないご協力のもとに実現した。これまで、各医師主導治験で同じような疑問や課題に直面してきたにもかかわらず、情報共有が殆どなされていなかった。今後は実務担当者である我々が、治験体制や規制上の不備を指摘して「提言」するのみに留まらず、「治験調整事務局としての問題点やノウハウ」を共有し、自らのアクションプランとして実行に移す具体案を検討しなければならない。